鯨
巨体を翻し
ビルほどの高さの飛沫をあげ
君は息をした
君のように美しく生きるには
どうすればいい
君ほど広い心を持っていても
海中響き渡るほどの大声で泣くんだな
私は君には似つかないが
息をしてもいいか
涙してもいいか
君にとっては小さなことか
動力
お前の船の一部になりたい
できれば動力がいい
嵐に沈んだりしない 鮫にも喰われやしない
限界が来たって動き続けて
海の果てまで乗せていってやるから
どこまで行くのか教えてくれよ
何か力になれないか
どうにかお前の力になれないか
夜は暗いまま
陽光のまばゆさに
仄暗きは怯えている
弱さや醜さ 生々しさなどは
ここにふさわしくないのだ
陽光のまばゆいかぎり
強くあらねばと思う
穏やかな夜に安堵する
体を横たえ 目を閉じ 深く息ができる
何も見えず 何も聞こえないが
湯に浸かるように
胎内で眠る赤子のように
安堵している
むやみに照らさず
たらしめず
醜さに寄り添う
弱者のための夜
暗いままの夜
遠出した日の夜
初めてを越えた夜
枕を濡らす夜
終戦の夜
あなたの哀しみ
私はあなたの哀しみ
孤独と似ているが違う
誰かと別れてひとりになったときに
私は訪れる
寒さと似ているが違う
春を待ち侘びているときに
私はあなたの側にいる
憎しみと似ているが違う
本当は愛したいから
私はあなたと泣いている
私はあなたと共にある
あなたが私を飲み込んだとき
私は形を変えて
あなたの物になる
誰かのぬくもりに似ている
春の祝福に似ている
愛の在り方に似ている
私はあなたの幸福